1. はじめに
3行でわかる本ガイドライン
- AIは飲食店の「人手不足・原価高騰・集客難」を補う強力な道具です。ただし最終判断は必ず人が行うのが大原則です。
- お客様の個人情報・非公開のレシピや仕入情報・苦情の原文は、設定を確認しないまま生成AIに入力してはいけません。
- アレルギー・食品表示・衛生管理など命と信頼に関わる領域では、AIは「補助」に限定し、自動判断させてはいけません。
なぜ今、飲食店にAIか
飲食業は、深刻な人手不足、食材原価・光熱費の高騰、インバウンド対応、衛生責任の重さという課題を同時に抱えています。生成AIをはじめとするAIツールは、SNS投稿や多言語メニューの下書き、予約対応、需要予測による発注最適化など、少人数の店舗でも使える形で急速に普及しています。
一方で、飲食業界には「飲食業だけ」を対象にした公的なAI活用ガイドラインがまだ存在しません(2026年7月時点の当分科会調査による)。実務では、国の横断的なAIガバナンス文書と、飲食店が従来から守ってきた食品・消費者保護ルール(景品表示法、食品表示法、食物アレルギー対応、HACCP等)を組み合わせて運用する必要があります。本ガイドラインは、その「組み合わせ方」を中小・個人飲食店向けにまとめたものです。
本ガイドラインの読み方
- とにかく早く使いたい方 → 第2章「信号機ルール」と第5章「安全ルール」だけ先に読んでください。
- 業務ごとの活用法を知りたい方 → 第3章へ。
- 経営者・店長の方 → 第4章で「店として決めること」を確認し、第7章の導入5ステップで進めてください。
- 店のルールを文書にしたい方 → 第8章の「店内AI利用規程(ひな型)」をそのまま使えます。
- 根拠となる公的文書を確認したい方 → 第6章の一覧表へ。
2. 使ってよいこと・やってはいけないこと(信号機ルール)
飲食店のAI利用は、リスクの大きさで3つに色分けして考えます。
🟢 青信号 — 内部業務AI(積極的に使ってよい)
店の中だけで完結し、間違えてもすぐ人が直せる業務です。
| 用途 | 例 |
|---|---|
| 文書の下書き | 求人票、シフト連絡文、朝礼メモ、業者への依頼メール |
| 会議・打合せ | ミーティングの録音の文字起こし・要約 |
| 調べ物 | 補助金情報の下調べ、設備・ツールの比較検討 |
| 数字の分析 | POSデータの売上傾向分析、廃棄記録の集計、需要予測 |
| アイデア出し | 季節メニューのアイデア、フェア企画のたたき台 |
🟡 黄信号 — 対外コミュニケーションAI(AIが下書き → 人が確認 → 公開)
お客様の目に触れるものです。「AI生成 → 人が事実確認 → 公開」の三段運用を必ず守ってください。
| 用途 | 確認すべきポイント |
|---|---|
| SNS投稿・広告コピー | 「No.1」「行列のできる」等の表現に裏付けがあるか(景品表示法) |
| メニュー説明文・多言語メニュー | 原材料・産地・調理法が実際と一致しているか(食品表示・景表法) |
| 口コミへの返信 | 口コミ原文・お客様の氏名をAIに入力していないか |
| 予約チャットボット | 回答範囲を限定しているか、複雑な要望は人に引き継ぐ設計か |
| 画像生成(販促画像) | 実際の料理と誤認させないか、既存作品に似すぎていないか |
🔴 赤信号 — 安全・法定対応AI(AIの自動判断は禁止。補助に限定)
命・健康・法令に直結する領域です。AIに「答えを出させて終わり」にしてはいけません。
| 領域 | 禁止事項 | 許される使い方 |
|---|---|---|
| アレルギー対応 | チャットボットにアレルゲンの有無を自動回答させる | レシピからアレルゲン28品目への対応表の下書きを作らせ、責任者が原資料と突合する |
| 食品表示・ラベル | AI出力をそのままラベル・メニュー表示に採用する | 必須表示項目の下書き生成 → 責任者が確認 |
| HACCP・衛生記録 | AI任せの自動記録だけで法定記録とする | 記録のデジタル化・異常検知のアラートとして使い、判断と承認は食品衛生責任者が行う |
| 食中毒等の緊急時対応 | AIの指示だけで対応を決める | 保健所・マニュアルが正。AIは情報整理の補助のみ |
入力してはいけない情報(信号の色にかかわらず共通)
以下は、学習に使われない設定(オプトアウト)や業務用の専用環境を確認しない限り、生成AIに入力しないでください。
- お客様の氏名・連絡先・予約情報・会員情報
- 従業員の個人情報・勤怠評価
- 苦情・クレームの原文(要約・匿名化してから扱う)
- 非公開のレシピ・原価・仕入条件
- 未発表の新メニュー・出店計画
3. 業務別の使い方ガイド
飲食店のAI活用は、次の4テーマに整理できます。
① デジタルマーケティング(集客・販促)
| 領域 | AIの働き | 効果 |
|---|---|---|
| 予約対応 | AIチャットボット・自動電話応対 | ピークタイムの電話取りこぼし防止、スタッフを電話番から解放 |
| 販売促進 | 注文履歴・天候に応じたおすすめ提案 | 客単価アップ、外国人客への多言語対応 |
| コンテンツ制作 | SNS投稿・広告コピー・レビュー返信・翻訳の下書き | 制作時間の短縮、季節キャンペーンの量産 |
| 画像制作 | 販促画像・サイネージ素材の生成 | 撮影・デザイン外注コストの削減 |
- 顧客向けに公開する文章・画像は完全自動にしない(三段運用)。
- 「人気No.1」「無添加」「和牛」「手作り」等の訴求コピーは、AI生成か否かにかかわらず裏付け資料を保存する(優良誤認・有利誤認の防止)。
- インフルエンサー依頼やPR投稿には「PR」表示を忘れない(ステルスマーケティング規制)。
- 画像生成は文章より慎重に。既存の写真・作品との類似をレビューし、実物と誤認させる「料理写真風」画像には注意書きを添える。
② 食品表示・メニュー表示
期待できる効果:季節メニュー説明文の量産と誤記低減/多言語メニューの即時作成/テイクアウト・物販ラベルの下書き(原材料・添加物・原産地・期限等)/「無添加」「不使用」等のNGワードのAIによる自己点検
- 正本データ(レシピ・原材料・アレルゲン・産地のマスター)を整備し、AIはそこから読み取らせる。AIの記憶や推測で表示を作らせない。
- メニュー名・説明文は実際の原材料・産地・調理法と一致していることを人が確認する。
- アレルゲン・原産地・添加物・期限など生命や信頼に直結する情報は、必ず責任者が原資料と突合する。
- 「無添加」「不使用」表示は消費者庁ガイドラインの類型に照らして自己点検する。
③ 食品安全(HACCP・衛生管理)
| 領域 | AIの働き | 効果 |
|---|---|---|
| 温度管理 | IoTセンサーによる温度の自動記録・逸脱時の自動アラート(一部メーカー製品はAIによる故障予知にも対応) | 冷蔵庫故障・温度逸脱の早期発見、全廃棄リスクの低減 |
| 衛生記録 | AI-OCR・音声入力による日誌の電子化 | 紙記録の負荷軽減、記録漏れ防止、保健所対応の迅速化 |
| 従業員教育 | 手洗い・身支度チェック、教育コンテンツ生成 | 衛生水準の底上げと可視化 |
| トレーサビリティ | 仕入・ロット情報の整理、回収対象の絞り込み補助 | 万一の際の迅速な対象特定 |
| 持ち帰り対応 | 注意書き・FAQの下書き | 食べ残し持ち帰りの安全な普及(食品ロス削減) |
- AIの異常検知は「アラート → 人が判断 → 対応」のフローで使う。自動廃棄・自動停止はさせない。
- HACCP記録は法定責務。AIが下書き・自動入力した記録も、食品衛生責任者が日次で確認・承認する。
- 店内AIカメラを使う場合は、利用目的の掲示と個人情報保護法の遵守が前提。
- 持ち帰り案内のAI生成FAQは、公的ガイドライン(第6章)に沿って人がレビューする。
④ データ活用(経営改善)
| 領域 | AIの働き | 効果 |
|---|---|---|
| 需要予測 | POS+天候+曜日・イベントの分析 | 適正発注による食品ロスの大幅削減、欠品防止 |
| 在庫・発注 | 予測連動の発注提案 | 過剰在庫と廃棄コストの削減 |
| シフト | 需要連動のシフト案作成、勤怠分析 | 人件費の適正化、過重労働の防止 |
| 顧客分析 | 来店履歴のセグメント分析 | リピート率向上、休眠顧客の再活性化 |
| メニュー開発 | 売上・組み合わせ・トレンド分析 | 不採算メニューの整理、ヒットメニュー創出 |
- 小さく始める。1店舗・1業務のお試し(PoC)→ 効果検証 → 本格導入の順で。
- POS・予約・勤怠などのデータがバラバラだとAIの精度は出ない。データの整理が先、AIは後。
- 顧客・従業員データは匿名化し、学習不使用設定の業務用環境で扱う。
- AIベンダー選定時は「人間中心・安全性・公平性・プライバシー・セキュリティ・透明性」の6観点で比較する。
4. 経営者・店長の方へ — 店として決める3つのこと
まず決めるべき3つのこと
- 使うツールを決める:店として使う生成AIサービスを指定し、学習不使用設定(オプトアウト)を確認する。個人アカウントでの業務利用は禁止する。
- 推進担当を決める:AIの窓口役を1名決める(店主兼任で可)。迷ったらその人に集約する。
- 禁止リストを共有する:第2章の「入力してはいけない情報」と「赤信号」領域を、アルバイトを含む全スタッフに周知する。
4週間スモールスタートプラン
経営者チェックリスト
- 店で使うAIツールと設定(学習不使用等)を確認した
- 推進担当者を決めた
- 入力禁止情報のリストを全スタッフに共有した
- 顧客向け出力の「確認役」を決めた
- アレルギー・表示・衛生の赤信号領域ではAIに自動判断させないことを周知した
- 苦情・個人情報の扱い方(匿名化・要約)を決めた
- AI利用で困ったときの相談先(第10章)を把握した
- 月1回、AI活用のふりかえりの場を設けた
5. 現場の安全ルール
入力前チェック(3段階)
生成AIに何かを入力する前に、次の順で確認してください。
- 個人情報はないか — お客様・従業員の氏名、連絡先、予約情報 → あれば削除・匿名化
- 秘密情報はないか — レシピ、原価、仕入条件、未発表メニュー → あれば入力しない(業務用環境のみ可)
- 原文のままの苦情・口コミではないか — 要約・匿名化してから
出力を使う前のゲートレビュー
顧客向けに出す前に、次の4法の観点で人がチェックします。
| 観点 | チェック内容 |
|---|---|
| 景品表示法 | 誇大な表現・根拠のないNo.1表示・実態と異なる訴求がないか |
| 食品表示法 | 原材料・産地・アレルゲン・期限の記載が正本データと一致するか |
| 食品衛生法 | 衛生・保存方法・持ち帰り条件の記載が手引書に沿っているか |
| 個人情報保護法 | 個人が特定できる情報が含まれていないか |
アレルギー対応の鉄則
- チャットボット・AIにはアレルゲンの有無を断定回答させない。「必ず店舗スタッフにご確認ください」と返す設計を標準とする。
- 店内では、消費者庁のコミュニケーションシート等を用いた人による確認を基本とする。
- AIはアレルゲン対応表の下書きと更新負荷の軽減にのみ使い、確定は責任者が行う。
6. 参照すべき公的ガイドライン一覧
本ガイドラインの根拠となる公的文書です。5つの層で押さえると全体が整理できます。
| 層 | 文書(リンク) | 発行主体 | 主な参照先 |
|---|---|---|---|
| 土台 | AI事業者ガイドライン(第1.2版)[PDF] | 総務省・経済産業省 | 全章(人間最終確認の原則) |
| 入力規律 | 生成AIサービスの利用に関する注意喚起 | 個人情報保護委員会 | 第2章・第5章 |
| 対外規律 | メニュー・料理等の食品表示に係る景品表示法上の考え方[PDF] | 消費者庁 | 第3章①② |
| 対外規律 | 景品表示法(「事例でわかる景品表示法」掲載ページ)/ステルスマーケティング規制 | 消費者庁 | 第3章① |
| 対外規律 | 早わかり食品表示ガイド(事業者向け・令和7年4月版)[PDF] | 消費者庁 | 第3章② |
| 対外規律 | 食品添加物の不使用表示に関するガイドライン[PDF] | 消費者庁 | 第3章② |
| 対外規律 | 外食・中食における食物アレルギーに関する啓発資材 | 消費者庁 | 第3章②③・第5章 |
| 安全規律 | HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け) | 厚生労働省 | 第3章③ |
| 安全規律 | 食品トレーサビリティ関係資料(外食・中食業編ほか) | 農林水産省 | 第3章③ |
| 安全規律 | 食べ残し持ち帰り促進ガイドライン(令和6年12月策定)[PDF] | 消費者庁・厚生労働省 | 第3章③ |
| 実装支援 | 生衛業向けデジタル化による生産性向上のすすめ(飲食業編)[PDF] | 厚生労働省委託 | 第3章④ |
| 実装支援 | テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)[PDF] | デジタル庁 | 第5章 |
| 実装支援 | AIセーフティに関する評価観点ガイド | AIセーフティ・インスティテュート(AISI Japan) | 第3章④(ベンダー選定) |
| 契約規律 | 東京都 AI導入・活用ガイドライン/文章生成AI利活用ガイドライン | 東京都 | 第3章④・第4章 |
| 契約規律 | 生成AI庁内利活用ガイドライン | 福岡県 | 第3章④・第4章 |
| 契約規律 | 大阪市生成AI利用ガイドライン(業務受託事業者等向けを含む) | 大阪市 | 第3章①④・第4章 |
※リンク先は2026年7月27日時点で確認したものです。改訂・移転により最新版のURLが変わる場合があるため、各発行主体のサイトで最新版をご確認ください。
7. 導入5ステップガイド
AI導入を「思いつきで始めて続かない」状態にしないための、導入から定着までの5ステップです。第4章の「4週間スモールスタートプラン」は、このSTEP1〜4を1か月で回す圧縮版に当たります。STEP5が継続運用のフェーズです。
STEP 1業務の棚卸し(何に使うか決める)
目的:効果が大きく、リスクの小さい業務から始める
- 店の業務を書き出し、第2章の信号機ルールで🟢🟡🔴に色分けする
- 「時間を取られている業務」(SNS投稿、求人票、電話予約、発注量の決定など)から候補を選ぶ
- 推進担当(店主兼任で可)を決める
STEP 2ツール選定と店内ルール整備
目的:安全なツールを選び、店のルールを文書にする
- 学習不使用設定(オプトアウト)ができるか、法人・業務用プランがあるかを確認して認可ツールを決める
- 第8章の「店内AI利用規程(ひな型)」に店名・施行日・確認役を書き入れ、店の実態に合わせて修正する
- 別表第1(情報区分表)・別表第2(飲食店特有領域の特則)を自店のメニュー・業態に合わせて調整する
STEP 3環境整備
目的:誰が使っても安全な状態を作る
- 店のアカウントを作成し、学習不使用設定・履歴設定・メモリ機能の設定を確認する(メモリ機能は原則オフから始める)
- 「入力してはいけない情報」の1枚ものをバックヤードに掲示する
- 困ったときの相談先(推進担当)を全スタッフに周知する
STEP 4小さく試行(お試し導入)
目的:1業務で効果と手間を確かめる
- 🟢青信号の業務を1つ選んで2〜4週間試す
- 「かかった時間」「出力の修正量」「良かった例・失敗例」をメモする
- 🟡黄信号業務に進む場合は、確認役による三段運用(AI生成 → 人が確認 → 公開)をセットで始める
STEP 5展開と定期見直し
目的:続く仕組みにする
- 効果があった業務を店の標準のやり方にし、対象業務を段階的に広げる
- 月1回、AI活用のふりかえり(うまくいった例・ヒヤリとした例の共有)を行う
- 年1回以上、規程・認可ツール・設定を見直す(AIサービス側の仕様変更が早いため)
8. 店内AI利用規程(ひな型)
そのまま印刷して店名等を書き入れれば使える、小規模飲食店向けの規程ひな型です。○○の部分を自店に合わせて記入・修正してください。
※多店舗・法人経営の場合は、就業規則等との整合を専門家にご確認ください。
○○(店名・屋号)AI利用規程
第1章 総則
- 第1条(目的) この規程は、○○(以下「当店」)における生成AIその他のAIツールの利用について、お客様の安全と信頼を守りながら業務に活用するための基本ルールを定める。
- 第2条(適用範囲) この規程は、当店の業務に関わるすべての者(店主、社員、アルバイト・パート、業務委託先を含む)に適用する。
- 第3条(用語) この規程で「生成AI」とは、文章・画像等を生成するAIサービス(ChatGPT等)をいう。「認可ツール」とは、当店が業務利用を認めたAIサービスをいう。
- 第4条(基本原則) AIは業務の補助として利用し、最終判断は必ず人が行う。AIの出力を理由に責任を免れることはできない。
第2章 利用ルール
- 第5条(認可ツール) 業務でのAI利用は、当店が指定する認可ツール(別紙に記載:○○)に限る。個人アカウント・個人スマホの無料AIアプリでの業務利用は禁止する。
- 第6条(設定の確認) 認可ツールは、入力内容が学習に使われない設定(オプトアウト等)であることを推進担当が確認のうえ利用する。
- 第7条(入力禁止情報) 別表第1に定める区分Aの情報は、AIに入力してはならない。区分Bの情報は、学習不使用設定を確認した業務用環境でのみ入力できる。
第3章 法令の遵守
- 第8条(表示・広告) メニュー・広告・SNS等のAI生成文は、景品表示法・食品表示法に照らして事実と一致することを人が確認してから公開する。「No.1」「無添加」等の訴求表現は裏付け資料を保存する。
- 第9条(著作権等) 画像生成AIの出力は、既存の写真・作品と類似していないかを確認してから使用する。実物と誤認させるおそれのある画像には注意書きを付す。
- 第10条(個人情報) お客様・従業員の個人情報の取扱いは個人情報保護法に従い、AI利用時は匿名化・要約化を原則とする。
第4章 人による最終確認
- 第11条(三段運用) お客様の目に触れる出力は、「AI生成 → 確認役(○○)による事実確認 → 公開」の手順を必ず経る。
- 第12条(安全・法定領域の特則) 別表第2に定める領域(アレルギー、食品表示、衛生記録、緊急時対応)では、AIによる自動判断・自動回答をさせず、補助利用に限定する。
第5章 リスク管理
- 第13条(報告) 入力禁止情報を誤って入力した場合、またはAI起因の誤表示・苦情が生じた場合は、直ちに店主(または推進担当)へ報告する。報告者に不利益は課さない。
- 第14条(相談窓口) AI利用の判断に迷った場合の相談先は、推進担当(○○)とする。
第6章 教育
- 第15条(周知・研修) 店主は、採用時および年1回以上、この規程と入力禁止情報を全スタッフに周知する。
第7章 雑則
- 第16条(違反時の対応) この規程に違反した場合、店主は利用停止その他必要な措置を講じる。
- 第17条(改廃) この規程の改廃は店主が行う。AIサービスの仕様変更等を踏まえ、年1回以上見直す。
附則 この規程は、○○年○○月○○日から施行する。
別表第1 情報区分表
| 区分 | 内容 | 例 | 扱い |
|---|---|---|---|
| A(入力禁止) | 個人情報・重大な秘密 | お客様の氏名・連絡先・予約情報、従業員の個人情報・勤怠評価、苦情の原文、非公開レシピ・原価・仕入条件、未発表メニュー・出店計画 | いかなる場合もAIに入力しない(匿名化・要約化すればBまたはCとして扱える場合がある) |
| B(条件付き可) | 店内の業務情報 | 売上・POSデータ、シフト・発注の計画、業者とのやりとり(固有名詞除く) | 学習不使用設定を確認した業務用環境でのみ入力可 |
| C(入力可) | 公開されている情報 | 公開済みメニュー・営業時間・住所、公表済みのSNS投稿、一般的な調べ物 | 認可ツールで入力可 |
別表第2 飲食店特有領域の特則
| 領域 | してはならないこと | 認められる使い方 |
|---|---|---|
| アレルギー対応 | AI・チャットボットによるアレルゲン有無の断定回答 | 対応表の下書き作成(確定は責任者が原資料と突合) |
| 食品表示・ラベル | AI出力をそのまま表示・ラベルに採用 | 下書き生成(責任者が確認して確定) |
| HACCP・衛生記録 | AI任せの記録のみで法定記録とすること | 記録のデジタル化・異常アラート(確認・承認は食品衛生責任者) |
| 緊急時対応 | 食中毒疑い等の対応をAIの指示だけで決定 | 保健所・マニュアル対応後の報告書ドラフト等の補助 |
9. よくある質問(FAQ)
Q1. スタッフが自分のスマホの無料AIアプリで店の仕事をしてもよいですか?
原則不可としてください。無料の個人向けサービスは入力内容が学習に使われる場合があります。店として指定したツール・設定に統一しましょう。
Q2. AIが作ったメニュー説明文が間違っていたら、誰の責任ですか?
公開した店の責任です。「AIが書いたから」は免責になりません。だからこそ公開前の人による確認(第5章)が必須です。
Q3. お客様の口コミにAIで返信してもよいですか?
下書きに使うのは構いません。ただし口コミ原文やお客様の氏名をそのまま入力せず、要約してから使い、返信前に内容を確認してください。
Q4. アレルギーの問い合わせにチャットボットで自動回答したいのですが。
推奨しません。アレルゲン情報の誤りは命に関わります。チャットボットには「店舗スタッフにご確認ください」と案内させ、人が対応してください。
Q5. AIで作った料理画像を広告に使ってもよいですか?
実物と誤認させる使い方は景品表示法上のリスクがあります。実際の提供物と異なるイメージ画像には注意書きを添え、実物写真の代替としては使わないでください。
Q6. 需要予測AIの予測が外れて食材が余りました。使うのをやめるべきですか?
予測は外れることがあります。導入直後は発注の最終判断を人が行い、予測と実績の差を記録して精度を確認しながら、徐々に任せる範囲を広げてください。
Q7. HACCPの記録をAIアプリで自動化してよいですか?
記録のデジタル化・入力補助は有効です。ただし記録責任は食品衛生責任者にあるため、日次の確認・承認は人が行ってください。
Q8. 補助金でAIツールを導入できますか?
IT導入補助金・小規模事業者持続化補助金等が候補になります。公募時期・要件は変動するため、商工会議所・よろず支援拠点や中小企業診断士にご相談ください。
10. 困ったときは
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| AI利用の判断に迷う | 店内の推進担当者 → 本ガイドライン第2章の信号機ルール |
| 個人情報を入力してしまった | ツールの履歴削除・提供元への連絡、必要に応じ個人情報保護委員会の窓口 |
| 表示・広告の適法性 | 消費者庁公表資料、保健所、景品表示法の相談窓口 |
| 衛生・HACCP | 所轄の保健所 |
| 経営・デジタル化全般 | 商工会議所・商工会、よろず支援拠点、中小企業診断士 |
11. 用語ミニ集
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 生成AI | 文章・画像等を作り出すAI(ChatGPT等)。本ガイドラインの主対象 |
| 学習不使用設定(オプトアウト) | 入力内容をAIの学習に使わせない設定。業務利用の前提 |
| RAG | AIに自社の正本データを参照させて回答させる仕組み。表示・アレルゲン業務での推奨形 |
| PoC | 本格導入前の小規模なお試し導入 |
| HACCP | 食品衛生管理の国際的手法。飲食店は「考え方を取り入れた衛生管理」が制度化 |
| アレルゲン28品目 | 表示義務・推奨のある特定原材料等 |
| 優良誤認・有利誤認 | 実際より著しく良く見せる表示(景品表示法違反) |